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ラポールとは何か

BOOK SOCIOLOGY

調査対象者との「信頼関係(ラポール)」が重要である。

社会には「表面的な付き合い」や「タテマエ」が存在するが、社会学の調査系の本にも「うわべ」にしか思えない表現はいくつも存在する。そのうちの一つが「ラポール」という言葉である。調査者と調査対象者にはラポールが重要であるとよく言われる(教科書で)。なんとなく理解できるが、この言葉の上っ面な感じが私は好きじゃなかった。だが、そう思っている人は私だけではなかったようだ。『質的社会調査の方法』で社会学者の岸は以下のように語っている。

 

前節で出てきた、調査者と語り手とのあいだの信頼関係という問題について、もう少し考えてみましょう。この両者のあいだの信頼関係は、これまでの質的調査の教科書では、「ラポール」という言葉で表現されていました。そして、調査者は、調査対象者から「正しい」データを得るためにも、また、調査を「円滑に」すすめるためにも、ラポールの形成が不可欠であると指摘されてきました。しかし私はいくぶん、そんなことは考えたこともありませんし、そもそも、いくら信頼関係があっても、いや信頼関係があればなおさら、どうしても言えないことがでてくるだろうし、だいたい「正しいデータ」や「円滑な進行」のために上っ面だけ仲良くしておきなさいと言われているようで、この手の議論には嫌悪感しかありません。ですからこの章では、ラポールという言葉は使っていませんし、それに関する議論もしません(岸・石岡・丸山 2016: 164)

 

ある意味、感動を覚える。このような姿勢のほうが誠実だと思う。岸が彼なりにこれまで積み上げてきた方法論、そして経験があるからこそ、ここまで言い切れるのだろう。

この本には色々な箇所に細かいTIPSが散りばめられている。一つひとつ言及はしないが、質的調査とは何か、と思う学部生や院生が読んで損はない。断言できる。

「生活史を知るとは、つまるところ、その人の人生を知ること」につながるんだなあと、しみじみ感じてしまった。岸のこれまでの本、そのまんまである。久々に『断片的なものの社会学』を読み返したくなった。

 

               『質的社会調査の方法

                    岸政彦・石岡丈昇・丸山里見

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 質的社会調査の方法

 

 

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