中動態とは何かをめぐる旅

國分功一郎『中動態の世界』は「中動態とは何か」をめぐる思考プロセスにこそ本質があり、そこが抜群に面白い*1。これが『中動態の世界』を読んだ感想のすべてである。

一読しただけなので議論のすべてを咀嚼したとはとてもじゃないが言い切れない。しかし、國分の文才はそれを凌駕する興奮を読者に促す。

もちろん、私は哲学の教養も言語学の教養も乏しいので、國分の議論の正当性や精確性といった専門的視点から、この本を論ずることはできない。だが〈中動態〉をめぐる議論に身を委ねることで、私の思考/頭が刺激を受けていることは読みながらも感じていた。

私たちは二項対立の無意味さをどこかで感じていながらも、その思考方法に囚われていることを知っている。「する」と「される」だけで世界を説明することなど、とてもじゃないができない、と。しかし現存し使用される言語は、その認識枠組みにおいてどうあがいても両者に回収されてしまう。

ある事象における「あやふやなこと」「グレーゾーン」「グラデーション」などを考えるときの補助線として、またはそのような議論の土台として、この本を読む意義は大きい。エナジードリンクを飲まなくてもいいような落ち着いたときに、もしくは簡単に割り切れないことをどのように考えていけばよいのかと思ったときに手に取ってほしい。そのような時に読むと得ることはたくさんあり、自分の思考が拡散していく様を体験できるだろう。

  

               『中動態の世界

                     國分功一郎

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中動態の世界

*1:イントロと結論部だけを読むという愚かなことをしないように。それをしてしまうとこの本の面白さは半減してしまう

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