濃密な学びが得られる社会学入門書3冊

 

                   1.

              『14歳からの社会学

                      宮台真司

           f:id:hateeeeeena:20160823190454j:plain

いまではもう希少価値になった〈変人〉〈奇人〉タイプの学者、宮台真司著作。縦横無尽にあらゆる領域を語る、その構えこそ社会理論家が夢見る姿そのものであり、ある種の社会学が目指してきた幻影である。

 

宮台の著作社会学全体を代表するわけではなく、いくえにも細分化した社会学において、それは所詮一側面でしかない。しかし、これほどまでにあらゆる層の読者を惹きつけた社会学者がかつていただろうか。『14歳からの社会学』は、そんな社会学者の一つの到達点を示す著作である。

 

ガチガチのアカデミックな社会学著作はアマゾンにたくさんある。そうではなく、この30年、常にメディアの場で格闘し自分の見解を世に説いてきた学者の著作に、まずは触れてみるといい。この本は、あなたに社会を眺めるための何からの〈物差し〉を提供してくれる。

14歳からの社会学

                  2.

              社会学の方法』

                    佐藤俊樹

           f:id:hateeeeeena:20160823195928p:plain

〈論理的〉かつ〈誠実的〉な社会学者、佐藤俊樹による著作。この本を入門書に入れるかどうかは人によって判断がわかれるが、多少骨太でも確実に社会学的視点を獲得したい場合、私はこの本をすすめる。

 

社会学とは何で、何の役に立つのか」。その問いは空虚なものでは決してなく、不可避の問いだ。この問いに応えることは社会学者の重要な仕事である。それを真正面から取り上げ、正々堂々とこなそうとするのだから、学問に対する姿勢も勉強になる。この問いを一人で思考し書き上げたのだから、脱帽するしかない。

 

さらには、社会学における〈理論〉と〈方法論〉への目配りがおそろしく秀逸だ。6人の偉大な社会学者から、その理論と方法を抽出し提示することで、読者に社会学の醍醐味そのものを追体験させる。第二部はさすがに初学者には難しいかもしれないが、第一部だけ読んでも社会学における〈道具〉を把握できるだろう。この〈道具〉こそ、社会を観察するための〈眼〉である。

社会学の方法

                   3.

              社会学の学び方」

                 三谷武司 

           f:id:hateeeeeena:20160823203014p:plain

最後に紹介するのは『社会学のつばさ』に収めれれている、三谷武司による論文である。社会学者のなかでもトップクラスに論理的思考のできる人物であることに間違いない。もし彼が同じ学年にいたら、決して彼と同じ道には進んではいけないと思える頭脳の持ち主である。ただ、彼は全然論文を書いてくれないし、ましてや単著なんて私が生きてるうちに書いてくれるのかあやしいが、それでも期待せずにはいられない、そんな学者だ。

 

なぜ私がこの論文をおすのか。それは、社会学の〈学び方の方向性〉を示しているからだ。社会学の入門書において、このような内容は珍しく、取り立てて意識することのない前提まで記述してくれている。ゆえに、入門書というより〈社会学入門一歩前〉という位置付けである。社会学を学ぶためにはどのような態度で臨み、何を期待しながら読めば良いのかなど、初学者が社会学を学ぶ上でのTIPSが散りばめられている*1

 

本の副題に「医療・看護・福祉を学ぶ人のために」とあるが、三谷論文に関していえば、その領域に直接の言及はないので、他領域に興味関心がある人も気軽に手を伸ばして問題ない。むしろ医療・看護・福祉に興味のある人たちだけに、この論文が読まれてきたと思うと嫉妬するレベルである。 

社会学のつばさ pp.17-31

*1:残念なのは、初学者がこの論文を読んだだけでは三谷のすごさはよくわからないということだ。それだけがただただ残念ではある。

FOLLOW ME